日本の気候風土は、春夏秋冬という四季があります
古来より、人々はその時々の風情として花鳥風月を愛で、よりよい生活を享受しようと
教養を深め、知恵を絞り、文化を育んできました
その成果を多くの人々に伝えようと、詩歌や日記などを書き、後世に伝わってきています


ときあたかも水無月(みなつき)
入梅で、心のうちではうっとうしくて風雅な気持ちにはなれないかもしれませんが
今年は、気候の関係かホタルの乱舞がさびしいという情報が伝えられています
一説には、2004年の台風で、ホタルの幼虫が水に流されて数そのものが少なくなったとも・・・・

ホタルは田んぼに流れる小川などに出るのが一般的ですが
大きな川は、河川改修により護岸や川底がホタルの棲家に適さなくなり
流れも強くて水量も多く、水質も悪いためホタルはいないのではとされていました
近年、多くの方の力と知恵で、いくつかの問題点が解消され
各地で「ホタルの飛び交う町」として多くの人が押し寄せています

本当ですと、夏の風物詩として、家族ずれでブラブラと、恋人同士で淡い光の下
ロマンティックな雰囲気に包まれるのでしょうが、昨今の事情は少し違うようです
旅行者がホタル狩りと称してツアーを組んで大型バスで乗り込んだり
乗用車で会場まで来たものの、車両台数のあまりの多さに地域の方の迷惑になったり・・・・
そしてとうとう、シャトルバスが運行されてしまうことに

本来、風流であるべきホタル狩りが、時代と共に様変わりしてしまいました
ホタルと共に共存している人たちにとっては、風情のままだったかも知れませんが
開発の進んだところでは、風情を求める気持ちがあっても近くに見出せなくなり
求める気持ちが、同時に同じ方向に向いてしまうことからの現象となってしまった挙句の果て・・・・
多くの方に愛でてもらいたいのですが、それがかえってあだになってしまうジレンマ

一方、日常生活でも、住宅建材などの性能アップにより家屋の気密化が図られ
暑くなった室内を快適にするため、冷房をかけて厚着をしてしまうアンバランス
防犯のため、街頭が明るくて月夜のそぞろ歩きも楽しめない
車の騒音で、虫の音も聞こえない、などなど・・・・ 、自然のままが一番いいのでしょうが
形態の変更や維持・更新のための改修、更に災害復旧など、さまざまな要因によって
その時代に必要とされるものへと手が加えられてゆくことは、時代のすう勢とともに
生活の基盤をそこに築いている以上、避けられないことでもあります

共生とか共存が求められていますが、力関係や気象条件によりバランスは大きく変わります
自然が織り成す情景を風情といい、それを愛でる気持ちや行為を風流というならば
人の心や自然の状況が、時代と共になくなったり、以前とは変わってくるのも当然の成り行きです
しかし、風流を愛でる行為や求める気持ちまで変えたくはないものです
【 風流(ふうりゅう) 】
  ・ 前代の遺風、聖人が後世に残したいよい流儀
  ・ みやびやかなこと、俗でないこと、風雅
  ・ 美しく飾ること、意匠をこらすこと、衣服や車の上などに花などを飾ったもの
                                                 ( 広辞苑 )

今年、編集子の棲息地近くを流れる1級河川にホタルが戻ってきました
そして早速でかけてきました、それを聞いた知人は風流だな〜といってくれました
気持ちが理解してもらえて(冷やかしと取らない自分に拍手)心地よい眠りが得られました・・・・
  伊吹の出世街道
  山行日:2004.01.12、(晴)
  所在地:滋賀県長浜市
横山の山麓を通る北国街道
枯れ尾花の立つ土手下から
伊吹山を見上げました
賤ヶ岳合戦の折、秀吉軍は
大垣からの大往還を敢行し
天下取りにつなげた
出世街道です
そのほか、多くの旅人が
悲喜交々の思いを胸に
行きかったことでしょう
歴史を偲ばせる情景です
  竹林のトンネル
  山行日:2004.01.15、(曇)
  所在地:滋賀県米原市山東町
これまでですと、1月15日は「成人の日」で
こんな日は晴着を着用するのが大変でした
法律の改正により、ただの一日に変わりました
特別な日が特別な日でなくなる
時代の流れも暦に現れてくる一例です
さて、この写真ですが
霊仙登山口近くの雪の日の光景です
竹林が雪の重みに耐えかね
稲穂のごとく頭をたれ、トンネルとなったところの
竹を切り取ったためにできた情景です
住宅地に近い竹はほとんど伐採される運命にあり
この竹林も数年後にはなくなってしまうのでしょう
詩情とは、時の流れのなかに
安らぎを与えてくれる心のオアシスみたいなもの
私たちは後世の人に
何を(どんな情景を)残せるのでしょうか・・・・
  黄色のじゅうたん  撮影日:2003.11.23、(晴)
イチョウの大木が側にあるのでしょう
伸びている影は、石灯篭でしょう
正解:詩(うた心のある人でなくてもすぐわかります
とある神社の境内でのスナップです
午後のひとコマでした
  氷雨の道行き
  山行日:2003.11.10、(雨)
  所在地:奈良県天川村
みたらい渓谷にある吊橋です
そぼ降る雨の中、外気の寒さに比べ
二人の心はさぞかし暖かいのでしょう・・・・
震える指でシャッターを押している
編集子がそこにいました
  水のまにまに
  山行日:2002.11.17、(晴)
  所在地:滋賀県木ノ本町
「ただの水溜りじゃないか!」
それを言ってしまえばおしまいですヨ・・・・
ここは湖北の紅葉の名所:鶏足寺(旧飯福寺)
小さな池に今しがた落ちたばかりの色葉に
陽の光が射し、青空までも映し出しています
つかもうとしても手に残るのは枯葉のみ
これを水溜りと見ますか
はたまたあなたの心を映し出す鏡と見るか・・・・
  染紅葉  撮影日:2003.12.02、(晴)
車窓を染め上げた紅葉
とある寺院に法要に立ち寄ったときの光景です
あまり晴れやかでないときの心の中に入ってきました
「はよう、元気をだしや〜」
誰かがそんなことを言ってくれているような・・・・
時を経てこんな風景も『詩情』と感ずるようになりました
  画廊 たんざん
  山行日:2002.11.13、(晴)
  所在地:奈良県桜井市
何度も登場する画面で恐縮です
談山神社拝殿内部から高欄越に眺めた紅葉です
吊灯篭と蔀戸内側の御簾の飾り紐のたぶさが
シルエットとなり一幅の絵を見ているようです
古典的な施設と秋の象徴である紅葉が
みごとに凝縮された『絵』ではないでしょうか
  北岳山荘 夜明け前
  山行日:2001.08.17、(晴)
  所在地:山梨県南アルプス市
夜空が詩情に加わるかは
その人の心情に大きく
左右されるのではないでしょうか
ロマンティックに浸ると
次のような文字が躍ります
『東の空が白んできた。窓越しに星が見え、早速カメラを手にして外に出る。下弦の月が暗闇を支配している、傍に輝いているのは金星か?すこぶる人恋しくなる。「あの人にこの情景を見せたい、あの人と一緒に語り合いたい」・・・・我に返ると一人だけの自分に気付く。これからも一人だけの山行が続くのだろう。ロマンチックにひたりながら肌寒さを忘れていると一条の光が目に飛び込んできた・・・・』
  五色の滝 水辺
  山行日:2003.0715、(晴)
  所在地:滋賀県伊吹町
奥伊吹に隠れた滝の里があります。日本の滝百選に
選ばれてはいませんが
それに勝るとも劣らない滝です
梅雨の晴れ間を狙って
山行しました
長雨による水は
靴のままの渡渉を妨げられ
文字通り川中に入っての
渡渉でした
川辺にはアジサイが
やさしく迎えてくれていました
  芹川 流れ橋
  山行日:2003.05.03、(晴)
  所在地:滋賀県多賀町
芹川の上流は霊仙山系につながっています
小川とはいえない広さですが田園地帯と
背後に山が聳え鎮守の森からは
子どもたちの歓声が聞こえてきそうです
これだけだったら
長閑な山村風景でしたのですが・・・・
  芹川 流れ橋
  山行日:2003.08.12、(曇)
使用前・使用後ではありませんが
台風による大雨で川は増水し架設されていた
角材の橋が流されてしまいました
現在は復旧されています
これも含めて、詩情ある風景なのでは・・・・
  長寿寺 灯篭火窓
  山行日:2004.03.02、(晴)
  所在地:滋賀県湖南市(旧石部町)
阿星山下山後立ち寄りました
新年か立春を迎えたあとでしょうか・・・・
ご住職が石灯篭の火窓に切絵を作って
嵌め込んでありました。お越しになる方にすこしでも
心が和めば・・・・という願いの表れでしょうか
心の故郷を見たようで、すがすがしい山行でした
  八草川 新緑
  山行日:2003.04.29、(晴)
  所在地:岐阜県揖斐川町
滋賀県と岐阜県の県境にある
八草峠の水系を集める八草川
山奥に遅い春がやってきました
広い川底には雪解け水が瀬音も穏やかに
芽吹き始めた木々の下をくぐってゆきます
みたいな
今日のことば
  冬支度 若狭の笠地蔵
  山行日:2001.11.06、(曇)
  所在地:福井県若狭町
紅葉と名水の名所でもある
天徳寺境内に八十八体石仏として鎮座まします
厳しい冬を間近に控えた
お地蔵さん(仏様)が
箕笠を着けていらっ しゃる
思わず笑みがこぼれ
シャッターを切りました
次の年
またこの情景をと思い
出かけたのですが
冬支度は
まだされていませんでした
チャンスは、最初にあり・・・・
人生の厳しさを
教えられているようでした
  ヒラリ〜一葉
  山行日:2003.11.01、(晴)
  所在地:岐阜県揖斐川町
落ち葉、どこにでもある現象です
たくさん落ちればそれはそれで絵になりますし
ご覧のようにたった一枚の落ち葉ですが
落ちてくる最中を捉えると
その人の心の在りかに舞い降ります
もう、冬が近いんだ〜・・・・
と、ロマンティックに浸る人もいれば
ああ、掃除が大変だ〜・・・・
それでは少し寂びしすぎませんか
511版:平成17年6月19日 日曜日
風  流
  風の音が聞こえますか
  山行日:2000.10.26、(曇)
  所在地:岐阜県高山市国府町
奥飛騨にある滝の名所
「宇津江四十八滝」の一コマです
紅葉に彩られた山中に
水が流れ落ちます
木々の間を渡る風が
『風情』という音を運んできてくれます
水と岩と木と鳥と・・・・
さまざまな楽器の編成で奏でられる
シンフォニー
指揮者は飛騨の風さんです
暫くは心静かにお聞きくださいませ
山行という行為は
危険と隣りあわせ、怪我や事故も多く
汗や埃で泥まみれになり
雷やにわか雨などなど・・・・
どうみても風流(風雅)というには
縁遠い世界だと思われます
現象の上では確かにその通りです
しかし、滝の飛沫に風の音を感じたり
水溜りの上にヒラヒラと
舞い落ちる木の葉を見ながら
晩秋の訪れを感じたり
野分にたなびくススキの穂に
秋の憂いを感じたり・・・・
気持ちの持ちよう(心のありよう)で
感じ方も見方もガサツな自分から
ロマンティックな自分に変身します
状況は誰の上にも同じです
恋を語るときのときめきと同じで
そこに素直な自分を見出せれば
いいのだと思います、それが風情に通じ
風流と感じるのではないでしょうか
その点、山登りは素直な自分を取り戻すには
うってつけの行為ではないかと思います
そこで今回は、「風流」にちなんで
風流な心を引き出す風情に焦点をあててみました
詩情が浮かんでくれれば幸いです
※ほとんどの写真が再掲です
             ご容赦くださいまし・・・・
 今回は大量の写真です、ご覧いただくのも
 大変でしょうが、お付き合いくださいませ
山行に見る 詩   情
一緒にいってみたいなこんなとこ
山葵の山行まっぷ
印の県に「目的地」があります
県名
福井
奈良
京都
滋賀
晩秋
  小谷山 ススキの穂波
  山行日:2003.11.07、(晴)
  所在地:滋賀県湖北町
季節が少し違いますが
芭蕉の句を思い出します
「夏草や つわものどもの 夢のあと」
ここは戦国時代の武将:浅井氏の
居城であった小谷城の山麓です
野分よりも弱かったのですが
風に揺られる穂波に
つい詩情をかきたてられました
岐阜
山梨
山呼-リスト
※ご参考までに
このコラムは
管理人のひとり言です
黒や灰色の文字は
編集子のオリジナル
カラー文字は編集子所蔵
資料からの引用です
山呼らいぶらり〜