幼き頃、日の暮れるまで赤トンボを追いかけていたことがあります
村のはずれにはお地蔵さんがあり
鎮守の森に烏が帰る頃、母親の声が響いてきます
まさに、「里の秋」そのもの、詩情あふれる世界を私たちは持っていました
子どもの頃、大人の方から
神社の敷地に入るときは「必ず鳥居を潜って入らなあかへんど」と、言われました
さらに、「出るときも潜って出なあかへんど」と、叱られました
詳しい理由は聞かされませんでしたが、幼き日々の思い出と共に脳裏に浮かんでまいります
鳥居はご存知の通り、神社の入口に設けてあります
「ここからは神域ですよ」という、一種の門だそうです
鳥居の称は奈良時代末期に現れるが、それ以前から存在していた
鳥居の発生は定説がなく
二本の柱の間に、清浄の地であることを象徴するしめ縄を張ったのが原形とされる
形式的には、神明鳥居系統(純神道系)と明神鳥居系統(仏教建築の影響)に大別される
元来は木造で平安時代に石造が現れた                       ( 建築大辞典 )


ところで
【 鳥居を越す(とりいをこす) 】ですが
  狐が鳥居を何度も越せば、やがて稲荷大明神になるという俗信から
  経験を積んで老獪(ろうかい)になる。鳥居数(かず)が重なる           ( 広辞苑 )


  「老獪:長い間世俗の経験を積んで狡猾(こうかつ:わるがしこいこと、こすいこと)
       世故(せこ:世の中の風俗・習慣など世間づきあいの上のさまざまの事がら)に
              たけて悪賢いこと。(−な政治家)、(−に立ち回る)」

とあります
確かに、この表現に合致する人は少なからずおられます
逆に、世渡りべたや世間音痴(社会音痴)といわれる類いの方もおられます(これ、私のことです)
それでも、世間の荒波に翻弄されながらも、それぞれの手段で乗越えられています
これらは、社会生活を営む上での各々の知恵であるわけですが
自然界の中に出れば、老獪さはどれだけ役に立つものでしょうか
むしろ、自然をあまく見て、大きな代償を背負うことになるかもしれません


昨今、異常気象や天変地異など、自然環境の激変が話題となっていますが
人間の傲慢さや老獪さが高じたものという、うがった見方をするのは見当違いでしょうか
美しいものや、芸術作品に出会ったときなどと同じような気持で自然と接することができれば
温暖化や酸性雨の問題も、もっと真剣に取り組むことができると思うのですが・・・・
それらは従前から叫ばれているのですが、世界的合意に至っていません、なぜなんでしょう・・・・
鳥居は越えるものにあらず、潜るものなり・・・・と、声が聞こえてきます
山岳信仰とは少し違いますが
山大好き人間の方たちは、自然に畏敬の念を抱き、自然と触れ合っています
もっと多くの方が、山野の楽しみ方を取得してくれればと思います、さすれば・・・・
東福寺通天橋の柱列
山行日:2002.12.10、(晴後曇)
所在地:京都市伏見区

京都五山の名刹
時代劇や
TVドラマによく出てきます
橋の上から眺める紅葉が
素晴らしいとの評判です
高台寺の階段廊下の柱列
山行日:2004.03.13、(晴)
所在地:京都市東山区

秀吉の妻「おね(ねね)」に
ゆかりの寺です
柱列も見事ですが
瓦屋根の円弧が
見事な景観を呈しています
さざれ石
山行日:2004.09.04、(曇後雨)
所在地:岐阜県春日村

「君が代」の歌詞に詠われた
さざれ石です
さざれ石公園として
整備されています
数をかぞえる
心覚えのしるしとして使うもの
拾遺和歌集(雑賀)
「さざれ石の
   数を皆取るよはひ幾世ぞ」
伏見稲荷大社 鳥居列
山行日:2002.12.10、(曇)
所在地:京都市伏見区
(写真再掲;何度となく登場)
一見、赤い壁と天井
異次元の世界に飛び込んだような錯覚を覚えます
これは信者の方が奉納された鳥居の列が織り成す風景です
2004年のNHK大河ドラマ「新選組」の
タイトルバックに登場しましたので、ご存知の方も多いのでは
自慢かもしれませんが
編集子は、その1年前にこのアングルを先撮りしています
参考に
山野に朱あり
 も
         ご覧下さい
談山神社の十三重の塔
山行日:2002.11.13、(曇)
所在地:奈良県桜井市

檜皮葺きの屋根が
リズミカルに重なり
天空に延びていきます
もちろん
カメラのアングルと
広角レンズによる
一種のトリックですが
庇の出と重なり具合といい
屋根のセットバック具合といい
絶妙のバランスです
南宮神社境内 南宮稲荷神社の鳥居列
山行日:2004.03.09、(晴)
所在地:岐阜県垂井町

柱列によって作り出される円弧が見事です
大滝神社境内 冨王稲荷神社の鳥居列
山行日:2004.05.01、(晴)
所在地:滋賀県多賀町

いわゆる鎮守の森の中の鳥居です
「鳥居数(かず)が重なる」という
言葉がでてまいりました
日常生活の中では
ほとんど使用しない言葉だと思います
山行をしていますと
鳥居をよく見かけることがあります
山岳信仰により
設けられているものですから
あってしかるべきものでもあります
そんな中で、山行中に
「鳥居数(かず)が重なるという
ことば通り
のシーンに出会いました
文字通りの鳥居をはじめ
重層の屋根、廊下の柱列、などです
単独での美しさもありますが
単独では見苦しくても
連続することにより産まれる美しさも
存在することが発見できるでしょう
県名
印の県に「目的地」があります
山葵の山行まっぷ
一緒にいってみたいなこんなとこ
山行に見る 数 重 ね
岐阜
滋賀
奈良
京都
みたいな
431版:平成16年10月7日 木曜日
今日のことば
山呼-リスト
※ご参考までに
このコラムは
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黒や灰色の文字は
編集子のオリジナル
カラー文字は編集子所蔵
資料からの引用です
鳥居を越す
山呼らいぶらり〜