五月を迎え空は晴れわたり
私たちは「五月晴れ」と称して歓迎します
本来、「五月晴れ」は五月雨(陰暦の5月頃に降る長雨)の晴れ間のことを言うのですが
現金なもので、私たちは雨のことを忘れて、晴れた青空ばかりをイメージしてしまいます
気温も高くもなく低くもなく、湿度もほどほどで、とてもすごしやすい頃です

冬の間、締め切っていたマイホーム(住宅=邸宅=殿閣)の縁側のガラス戸も開け放ち
花の香りが漂い、窓越しに見える山の新緑がとても目に優しく
頬をなぜるそよ風に至福を感じます

人はそのときの風を「清風」とか「薫風」などと、詩情あふれる言葉で表現します
そんな情景を昔の人は次のように言っています

 【 薫風自南来 殿閣生微涼
    (くんぷうみなみよりきたりて でんかくびりょうをしょうず) 】

  爽やかな初夏の風が南より吹き来たり
  宮殿に微(かす)かな涼しさが生まれる
  まったく作為を起こさないところこそが悟りの現出であり
  しかも、無心のうちに無量の利益(りやく)を普(あまね)く及ぼす
  もとは、唐の文宗皇帝が
  「人は皆な炎熱を厭(いと)うも 我は夏日(かじつ)の長きを愛す」と詠じたのを受けて
  柳公権(りゅうこうけん)がこの二句を加えて五言絶句としたもの
    出典:圜悟語録(えんごごろく)                   ( 禅語大辞典 )


【 薫風(くんぷう:青葉の香りを吹きおくる初夏の風) 】
【 清風(せいふう:清らかな風、さわやかな風)】
【 殿閣(でんかく:宮殿と楼閣)】


春夏秋冬:四季の移ろいのなかで、風が一番心地よいと感じる頃が初夏の時季です
私たちは、桜花爛漫の中で人生の節目を迎え、落ち着いたところで迎える季節でもあります
木々の若葉が萌え、田畑には種まきの適期とされる八十八夜を迎え
茶所では茶摘の最盛期となり、人々の心に活気をもたらします

反面、古人いわく、木の芽時に体調を崩す人が多いから、体調管理に気を配れ・・・・
また、五月病といわれる神経症的な状態が生じたりもします
わたしたちが、何も準備をしなくても爽やかな初夏の風はやってきます
しかし、果報は寝て待て(幸運は人力ではどうすることもできないから
                あせらないで静かに時機のの来るのを待て
)というのではありません
普段どおりの生活をしながら、準備を怠りなくし
何が起こっても、すべてを受け入れられる状態にしておくことこそが、大切なのかもしれません

化石燃料を使っている現代人は、これまで資源の枯渇を心配していました
然し今、資源枯渇の前にNOxやSOxそしてCO2などなど・・・・
地球そのものが警戒信号を発しています
果報は寝て待て、とは行かない事態になりつつあります
「薫風」や「清風」などと、風雅に浸れなくなる前に人類の叡智によって・・・・
沙沙貴神社のなんじゃもんじゃ
         まさに白雪がかぶったようです

写真提供:2005.05.13  sizuka さんより
看板には
沙沙貴の森 なんじゃもんじゃ
何だこの花? と
言うとこらからでしょうか
「なんじゃもんじゃ」と呼ばれている
「ヒトツバタゴ」なのです
成長しますと、30mにもなると言う
もくせい科の落葉樹なんですが
日本では
対馬と木曽川沿いにしかみられないようです
ところで、この花びらなんですが
4枚に見えますが
実は1枚の花びらが裂けたもので
これもめずらしいなら
遠目には粉雪が積もった様にも見える
また不思議な樹木と言えるそうです
花の見頃は、5月中ごろ1週間程度
昭和63年5月18日 苗木奉納
平成3年晩秋 現在地に植樹
                 34代 眞杜 印
沙沙貴神社 楼門
山行日:2004.06.24、(曇)
所在地:滋賀県安土町

中世には観音寺城に拠る
佐々木六角氏の崇敬が厚く
その祈願社として栄えました
門の脇には佐々木氏の
定紋である「四つ目結い」
の提灯が掛けられ
そのよすがが
今に伝えられています
門の近くには
粉雪が積もったような花が咲く
なんじゃもんじゃ」と呼ばれる
木があります
開花時期は5月上旬
そう、今頃なんです
仙琳寺 楼門
山行日:2004.01.31、(晴)
所在地:滋賀県彦根市

アーチ状に繰り出された天井をくぐり
しかも階段で傾斜地をうまく処理され
目を奪われるデザインです
この山門は小さいながらも心惹かれます
県名
印の県に「目的地」があります
山葵の山行まっぷ
一緒にいってみたいなこんなとこ
山行に見る 楼 門
京都
滋賀
岐阜
みたいな
殿閣生微涼
南宮神社 楼門(重文)
山行日:2004.03.09、(晴)
所在地:岐阜県垂井町

南宮山の山麓にあり
杉の木立に囲まれて
色鮮やかな丹塗りの建物が
立ち並んでいます
関ヶ原の合戦で
東軍と西軍が対峙したとき
山麓にある
南宮大社の辺りには
吉川広家、安国寺恵瓊が布陣
毛利秀元は山中に
布陣した所です
楼門の前にあるのは
石造の太鼓橋です
阿弥陀寺 楼門
山行日:1999.07.08、(晴)
所在地:京都左京区

いわゆる竜宮門を簡略にしたものと思います
洛北、大原三千院の近くにあって
紅葉の名所でもあり
即身仏が安置されていることでも知られています
鞍馬山から貴船神社へハイキングの帰路
立ち寄りました
門の種類は形によったり
使われ方によって分類され呼称されます
楼門は形によって分類される呼称で
2階造りの門で、特に初重に屋根のない
1重屋根のものをさしていわれます
ちなみに2重屋根のものは2重門と呼ばれます
507版:平成17年5月8日 日曜日
日吉神社 楼門(重文)
山行日:2003.11.27、(曇)
所在地:滋賀県大津市

坂本にある日吉大社
西本宮の楼門です
ご存知の通り
全国各地に鎮座する
3,800余りの「山王さん」の
総本宮です
正式には
「山王総本宮日吉大社」
(さんのうそうほんぐうひえたいしゃ)
と呼ばれます
神輿ぶりで京の人たちを
悩ました神輿や重文の石橋
など、文化財の宝庫です
神社仏閣の多い京滋地方は
楼閣(重層の建物、たかどの)も
いたるところで見受けられます
いずれも文化財価値のある建物で
その時代の人々の念い(おもい)の上に
成り立っています
この想いが壊れたときに
砂上の楼閣と変わり果てます
世界文化遺産の価値観が
西欧の石造文化から木造にも向けられ
私たちにも責任が課せられました
創建当時の材料や工法を伝承し
後世に伝えるのが
文化財と共に暮らしている
私たちの役目だとも思います
それがひいては
「薫風」や「清風」を待ちわびる
私たちの思いに沿うものなのでは・・・・
今回は、殿閣の内、山行で見かけた
楼門にスポットライトを照射してみました
今日のことば
山呼-リスト
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山呼らいぶらり〜