『 旅に病んで夢は枯野を駆け巡る 』

これは、皆さんよくご存知の松尾芭蕉の辞世の句です
松尾芭蕉(1644〜1694)は、伊賀上野に生まれましたが、近江(滋賀県)に殊のほか縁が深く
大津市の義仲寺(ぎちゅうじ:木曾義仲を葬った場所)に墓があります
また幻住庵に滞在したときの記録『幻住庵記(げんじゅあんのき):一所不住※の議論』で知られる
 (※一所不住(いっしょふじゅう):一定の住所を定めないこと)
滋賀県の各地を歩いていますと、芭蕉句碑も多く存在しています
彦根には、蕉門十哲の一人である
森川許六(もりかわきょりく):彦根藩士(1656〜1715)の碑もあります

さて、今週のことばの【笈(きゅう・おい)】ですが
芭蕉の紀行・日記である「笈の小文(おいのこぶみ)」
蕉門十哲の一人である各務支考(かがみしこう:1665〜1731)が著した
笈日記(おいにっき)」に使われています
とくに、笈日記は芭蕉終焉の記事が詳しく著されています


  【 笈(おい)
    行脚僧・修験者などが仏具・衣服・食器などを入れて負う箱
    つづらに似、四隅に脚があり、戸によって開閉する       ( 広辞苑 )


箱に物を入れて背中に負いねる物、とくればザックです
私たちが山行する際に必需品として所持するというか体の一部となっているものです
今でこそ背中にフィットしたものが手に入りますが
その昔は、背負子で代表されるように矩形のものでした

鎌倉時代:武蔵坊弁慶のいでたちを思い起こせばイメージが思い起こせると思います
  勧進帳
   源義経が山伏姿で陸奥に下ろうとして安宅関に差しかかり、関守富樫左衛門の詮議に遇い
   弁慶がやおら笈から勧進帳をとりだして読み上げ、怪しまれた義経を折檻し
   ようやく通過する・・・・
というシーンです
   この笈が葛籠(つづらこ)に似ています
   2005年、NHKの大河ドラマ「義経」をご覧頂けたら小道具として登場してくると思います
   お見逃しなく


現在、私たちが使う笈:ザック(リュックサック:背負い袋)は
山行行程に応じて容量を加減します、また、自分の肩幅からはみ出さない大きさを選びます
袋の中には、魔法の小箱のように色んな物を忍ばせています
それを背負いながら、坂道を登ったり、沢を伝ったり、尾根を歩きます
その道程は直線であったり、曲がりくねっていたりします
幾重にも曲がっている坂道を葛折(つづらおり)、九十九折とも書きます
時には、10kmも15kmも歩くこともあり、車社会に浸っている我が身が悲鳴を上げることもしばしば
なぜ、こんなことをしなければいけないのか・・・・愚問が口の奥でため息によってかき消されます
進化により、二足歩行になった時点からの宿命なのですが
休みになると、我がふくらはぎが山へ行こうと騒ぎたてます、あ〜楽しき哉、山ある人生・・・・
乗鞍岳の九十九折
山行日:2000.08.22、(曇後晴)
所在地:岐阜県丹生川村

麓に広がるのは乗鞍高原で
乗鞍エコーラインの九十九折が
浮かび上がっています
道路を上りきると畳平で
乗鞍スカイラインにつながります
写真のカメラの方向には
八ヶ岳や南アルプスが望める
のですが雲で隠れています
御嶽山は右側に
北アルプスは左側になります
文字通り眺望が欲しいままです
戸隠山中の九十九折
山行日:2003.05.12、(晴)
所在地:長野県鬼無里村

大望峠;戸隠高原から
鬼無里村への峠道にあります
(標高:1,000m付近)
天候がよければ遠く
北アルプスが望めるという
右のほうにカメラをむけると
戸隠連山があります
ヘアピンカーブの連続で
車の運転には
神経をすりへらします
県名
印の県に「目的地」があります
山葵の山行まっぷ
一緒にいってみたいなこんなとこ
山行に見る 九十九折
岐阜
三重
滋賀
長野
みたいな
438版:平成16年12月23日 木曜日
阿星山の九十九折
山行日:2004.03.02、(晴)
所在地:滋賀県石部町

登山口は少し下にあり
この舗装道を
一部通行します
カメラの位置には公園があり
多くの人の憩いの場が
作られています
楽をしてこんな上まで
上がることができるのですが
反面、いろんな問題も・・・・
赤坂山の九十九折
山行日:2001.04.23、(曇後雨)
所在地:滋賀県マキノ町

地図には載っているものの
道は狭く未舗装の部分も多い
当然のことながら
落石も多く、いつも工事中
でも、カメラの位置まで身体を
運び上げてくれるのですから
その存在は
ありがたいことなのです
山呼-リスト
※ご参考までに
このコラムは
管理人のひとり言です
黒や灰色の文字は
編集子のオリジナル
カラー文字は編集子所蔵
資料からの引用です
今日のことば
石榑峠の九十九折
山行日:2003.08.22、(晴)
所在地:三重県大安町

竜ヶ岳の山腹からの眺望です
九十九折の状況が
よく見て取れます
前方の大きな山は
釈迦ヶ岳、その向こうに
御在所岳、雨乞岳が
頭をのぞかせています
山行のコース取りは
メンバーや体調によりますが
石榑峠から竜ヶ岳を選ぶと
往復4時間のコース設定
このときは
更に下の宇賀渓からで
倍の8時間の設定でした
山呼らいぶらり〜
九十九折:曲がりくねった坂道ですが
歩いている時は実感として
曲がっていることは感じません
むしろ、歩き終えて
坂道の上からその足跡を見下ろすと
道が曲がっているのがわかります
こと左様に、私たちは物事を行うとき
意外と自分の足元が見えないものです
見えないというのは
非常に不安なものです
自分の足元を見る
「照顧却下:履物をそろえよ」
難しい道理よりも
まず日常をしっかりせよ、ということで
しっかりとした基本があって
始めてことが成り立つ、といわれます
これからも体力の維持に努め
歩きつづけたいものです
今回は、九十九折を特集します
数ある内、車が通れる坂道です