先日、とある座敷の床の間で、次のような掛け軸を拝見いたしました
【  智者楽水 仁者楽山 若余曲肱為枕楽在其中
 ( らく ちしゃはみずをたのしみ じんしゃはやまをたのしむ
   もし われひじをまげて まくらとなさば らく そのなかにあり ) 】
 というものでした

楽山・・・・」うんぬんは、皆さんご存知の『論語』の中の一説にありました
雍也(ようや)篇;第六:二十三
【 子曰、知者樂水、仁者樂山、知者動、仁者静、知者樂、仁者壽 】
   子の曰わく、知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ
   知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し

   先生が言われた、「智の人は[流動的だから]水を楽しみ
               仁の人は[安らかにゆったりしているから]山を楽しむ
               智の人は動き、仁の人は静かである
               智の人は楽しみ、仁の人は長生きをする」

この言葉を何度も反すうしていますと、山行を楽しんでいる自分が
落ち着いていて、穏やかな生活をしているように思えてくるから不思議です
自分は、知恵もなく、徳もなく、がさつで不器用な人間ですが
山野に身を投じていると、一時的ではありますが、素直な自分を取戻し
真摯(しんし:まじめでひたむきなさま)な態度で人と接することができるような、気がします
孔子も、このようなことから
「山を楽しんでいると、仁者のようになさけ心が深く、落ち着いて穏やかな人間になれますよ」
と、言われているように、私は勝手に思うことにいたしました
この言葉「仁者楽山」は、山好きの人のためにある言葉なのだ〜、と・・・・

さて、後に続く語句「若余・・・・」の出典は、述而編;第七:十五
【子曰、飯疏食飮水、曲肱而枕之、樂亦在其中矣、不義而富且貴、於我如浮雲】
からです
       (子の曰わく、疏食(そし)を飯(くら)い水を飲み、肱(ひじ)を曲げてこれを枕とす。楽しみ亦た其の中に在り。
        不義にして富み且つ貴きは、我れに於て浮雲(ふうん)の如とし。
       先生が言われた、「粗末な飯を食べて水を飲み、腕を曲げてそれを枕にする。楽しみはやはりそこにも自然にあるものだ。
       道にならぬことで金持ちになり身分が高くなるのは、私にとっては浮雲のよう[に、はかなく無縁なもの]だ。」

腕枕で転た寝(うたたね)している時に、人生の安らぎを感ずる(編集子訳)」、とは・・・・まさに同感デス、

楽(たのしむ)】 心が満ち足りて安らぐ
私たちは、この「」をもとめて、日々汗を出して働き、悩み苦しみ
家族との絆を深め、恋人と睦みあい、友人と酒を酌み交わしたりしています
しかしながら、その中にまた「悩みや苦しみ」が生まれ、どうどう巡りをしているのが現実です
そんな思いのとき、山野に出ると、さらに厳しい自然と向き合うことになりなりますが
極限状態の中、自分の殻を破り捨て、無垢の自分と対面することができるならば
「悩みや苦しみ」が、見栄やこだわりの中にあることが、心の窓に浮かんできます
そんな時、一条の光が「意(こころ)」のうちに差しこみ
世の中の「柵(しがらみ)」がすこし低くなり、すき間からぼんやりと進むべき道が現れるかも・・・・
山岳信仰が盛んだったのも、畏敬の念を示す自分を見出したいが為、であったのかもしれません
霊仙山 平原
山行日:2002.05.06(晴)
所在地:滋賀県米原町

登頂も終え
苦闘を強いられた
山頂を振り向くと
山が私たちを
包み込んでくれるような
そんな気がします
竜ヶ岳 尾根道
山行日:2003.08.22(晴)
所在地:三重県大安町

はるかかなたに見えるのが
竜ヶ岳山頂
ここまでかなりの時間をかけ
やっと尾根道にでました
つい歌を
口ずさみたくなります
能郷白山 尾根道
山行日:2003.09.29(晴)
所在地:岐阜県根尾村

登頂も終わり充足感が身体を包み込む
昼下がり、天候もよく、辺りが明るいこと
これが鼻歌の出てくる三要素
那須ヶ原山 尾根道
山行日:2004.04.24(晴)
所在地:滋賀県甲賀町

この先に最大の難所
キレットが待っているというのに
歌声が響きます
県名
印の県に「目的地」があります
山葵の山行まっぷ
福井
滋賀
三重
岐阜
みたいな
419版:平成16年6月3日 木曜日
「楽(らく)」な山行はありませんが
厳しく険しいルートに挑み
苦闘の末
難関(難所)を突破したときや
目的が達成(登頂)された時などは
気持も落ち着きを取戻し
満足感、充足感で一杯になります
こころにもゆとりが出て
鼻歌なども出てくるかも知れません
そんなときに出てくる歌は
青春歌謡や唱歌や童謡などです
私の場合、ニューミュージックや
演歌などは出てまいりません
不思議なことです
今回は、苦しみの中に見つけた
楽しみ、愉しみ
歌をくちずさみたくなるような
シーンを選んでみました
山呼-リスト
今日のことば
※ご参考までに
このコラムは
管理人のひとり言です
黒や灰色の文字は
編集子のオリジナル
カラー文字は編集子所蔵
資料からの引用です
仁 者 楽 山
岩篭山 尾根道
山行日:2002.10.27(晴)
所在地:福井県敦賀市

道の向こうに
幸せが待っているように
気持が高揚してきます
童謡が似合いそうな風景です
山行に見る 山に歌えば
一緒にいってみたいなこんなとこ
山呼らいぶらり〜