滝へのいざない・・・・

緑あふれる山や川、谷をわたる風に誘われ、森に分け入ると
せせらぎの音、早瀬の音、澱みの静けさの中に時折聞こえる鳥達のさえずり・・・・
空は水瓶、雨となって木々の葉にふりかかり、枝をつたい大地に水を蓄える
ろ過された水は、高き所から低き所へと流れ下る

時には、滝となって涼しき風を起こし、爽やかな音楽を奏でる
静寂(しじま)を破る轟きの音、軽快な音、穏やかな音色と和音、そしてテンポとメロディー・・・・
空・水・風・緑・大地、それは自然がかなでるシンフォニー(交響曲)
風は頬をすり抜け、木々の緑が目に優しく語りかける
       その水は、限りなく清らかで透明・・・・
       滝は、そのコンダクター(指揮者)・・・・


私たちの住む日本列島は、その地形、気候などから豊な自然が形成されています
そのなかでも滝は、多種多様な形態を見ることができます
環境庁の調査※によると
(※自然景観資源調査:下記に調査要綱の抜粋参照)
日本には、落差5m以上の滝は 2,488箇所存在すると言われていますが
5m未満の滝や渓流などを含めれば、相当な数にのぼります

日本の滝は小規模で、そのほとんどが視覚の範囲内に捉えられます
ナイアガラ滝やビクトリア滝などのように、一目では全貌が捉えられない巨大な滝ではありません
それよりも、両者の違いはその水の質で
水上より豊に流れ落ちてくる水は、透明で清らかです
その水の清らかさから、「滝に打たれて心身を清める」、などという行為が行われました
それは透明で清らかな水だからこそ生まれた
自然への畏敬の念の現れではないでしょうか・・・・



マイナスイオン』なる言葉があります
イオン:正または負の電気を持つ原子または原子団、陽イオンと陰イオンがある
マイナスイオン:この陰イオン(アニオン)と混同されることがあります
          マイナスイオンは科学用語(科学的定義)にはありません

よく、「滝の側
(そば)の爽快感はマイナスイオンが豊富だ・・・・」、と聞くことがあります
それは『岩などに水が激しくぶつかり微細な水滴が飛び散るときに
     水滴はプラスに、周囲の空気はマイナスに帯電することが知られており
     その結果、マイナスイオンの多い環境が作り出されています』
などと説明されます
しかし、滝の側の爽快感とは

飛び散った細かな水滴が気化する時の気化熱による空気の冷却と
都会の喧騒から離れた場所で
       空気が清浄なこと、
        緑が目にやさしいこと、
        風が涼しいこと・・・・
       等々の複合的な要因によるもの、だと考えられています
この場合は、イオンというよりも
正しくは、水滴の摩擦帯電現象によるものと考えるのが論理的である
、とされています
いずれにしても

科学用語ではないとされる『マイナスイオン』なるもので、説明する必要はない
のでは、と・・・・

科学的でないもの(マイナスイオン)が、広く知られるようになったのは
「健康ブーム」が素地にあった、といわれています
そこに大気イオンという
およそ健康商品とは無関係な分野の専門用語を持ち込まれたことが、新鮮に受け取られ
流行の力のひとつとなったのであろう
、と推察されています
またマイナスイオンに関する健康本や、TVの特集番組の影響も大きかった
と分析されています

理屈はともかく、「滝の側に行くと爽快感が得られる」のは事実であり
想像するだけでも、心が爽やかになります、さあ、滝へご一緒に・・・・
 滝の形 島国である日本は地形が複雑繊細なため、流れ落ちる滝の形は多様です
       それぞれの滝の持つ細やかな形状,風合いが日本の滝の特徴と言えます

 
       (参考写真:滋賀県内の滝から選出しましたので
               小規模で特徴が顕著でありませんが、ご参考までに・・・・)
● 直瀑

  一気に流れ落ちる滝
  最も一般的で
  各地にある
八淵の滝=貴船の滝、(滋賀県高島市)、日本百名瀑
● 段瀑

  2段、3段というように
  それぞれの滝が
  階段状に分かれ
  落下する滝
ブンゲン山=無名瀑、(滋賀県米原市旧伊吹町)
● 分岐瀑

  流身が岩によって
  幾筋にも分かれて
  落ちてくる滝
三筋の滝、(滋賀県甲賀市信楽町)
● 斜瀑

  滑滝に包含されるが
  距離に比して
  落差が少ないもので
  滑滝よりは勾配が急
蛇谷ヶ峰:指月谷=無名滝、(滋賀県高島市朽木村) 
● 滑滝

  渓流や渓谷の中にあり
  落差の大きいもので
  斜瀑よりは緩やか
 
 
白滝谷:スベリ石(滋賀県大津市) 
● 渓流瀑

  渓流や渓谷の
  流れの中にある滝で
  落差の大きいもので
  滑滝よりも緩やか


※写真は渓流の範疇です
犬上川=大蛇ヶ淵、(滋賀県多賀町)
● 潜流瀑

  伏流した地下水が
  断層などにぶつかって
  その中腹から湧き出す
  ように流れ出る滝


※写真は、高低差がないため、滝としての姿としてとらえられませんがご了承ください
湧水瀑として捉えた方がいいかもしれません
芹川=権現谷、(滋賀県多賀町)
● 滝モドキ

  上記の滝としての枠から
  はみ出したもので
  恒常的でないもの

  (開発地などで生じる
  自然発生の滝)
側溝から流れ落ちる分岐瀑(滋賀県東近江市永源寺)
   
 滝の名前 その水の清らかさから、滝に対する信仰心が生まれました
        それは、滝の名前からも推し量ることが出来ます
        滝の数だけ名前はありますが、その中でも多いものを挙げてみますと・・・・

        (参考写真:滋賀県内の滝から選出しましたので
               小規模で特徴が顕著でありませんが、ご参考までに・・・・)
● 不動滝、龍神の滝

  滝に神仏が宿る
  との発想からで
  多くの滝には
  水神が祭ってあります
不動滝(三ノ滝)=明王谷、(滋賀県大津市)
● 銚子ヶ滝、樽滝

  信仰の道具である
  酒と結びついた場合等
  流れ落ちる様が
  銚子や樽に似ているから
五銚子ヶ滝=横山岳、(滋賀県木ノ本町)
● 白糸の滝、布引の滝

  水の流れから
  白い糸や布を
  イメージした美しい表現
布ヶ滝=白滝谷、(滋賀県大津市)
● 鮎返の滝、魚止滝

  魚の遡上を
  阻むような勢いのある
  水の流れから表現する
魚止の滝=八淵の滝、(滋賀県高島市)
● 大滝、小滝

  同じ渓流の中での変化で
  落差・幅・水量などにより
  呼び分ける
ワサビ大滝=白滝山(滋賀県大津市)
● 夫婦滝、男滝,女滝

  地形によって2本の滝を
  夫婦滝と呼んだり
  分離したものを
  男滝・女滝と呼び分ける
 
夫婦滝=白滝谷(滋賀県大津市)
自然景観資源調査2.1.5  表2-1-3調査対象範囲及び特性記述の方法(抜粋) (出典:環境庁)
数型 自然景観
資 源 名
本調査に
おける
考 え 方
調査対象範囲 特性記述の方法
「分類」は、A、B、Cの記号で、その他の項目は  
数値または簡潔な記述により調査票に記載する
特性記述
項   目
計測
単位
分類・計測方法等
B1
河川景観
06:瀞
  Pool
水深があり、静かな流れとなった川

※深くて静かな流れとなっている山間の部分
全部
(例)長瀞
延長 km (小数第1位)、「01峡谷・渓谷」と同じ
巾(上・下) m 峡谷の瀞の場合に計測する
深さ m -
水深 m -
特記 - 形:S字峡、十字峡、等
「A2山地(非火山性)景観」の場合と同じ
07:
岩峰・岩柱
  Tor
峡谷、渓谷等河川に付随して見られるもの

※1
全部
(左列※1:周囲が風化・削剥されたため残された岩状又は塊状の基岩の高まり)
延長 km (小数第1位)
比高 m -
地質 - -
08:淵
  Pool
  
川の一部に生じた深い淀み 名称の付されたもの
(例)日光の含満ヶ淵
面積 u 分布域の延長×巾
水深 km (小数第1位)
09:甌穴群
  Potholes
※河床や河岸の岩石の表面に生じた円形の深い穴の群 延長30m以上のもの
(例)関之尾甌穴群
(宮崎)
面積 u -
m 典型的で最大の欧穴の長径・短径
10:滝
 Water fall
※河床の縦断勾配が不連続的に急になり、河水が落下または急激に硫化している地点

この欄(列)の※は「自然環境:凡例解説から転記しました」
落差5m以上のもの
(地形図上では5m以上のものを表示)

※本hpでは
(○○瀑)※として
分類しています
分類 - (水 系) A本流滝
B懸谷滝
C地下水滝(潜流懸谷)
       (潜流瀑)※
(落下型) A一文字状(直瀑)※
B多段   (段瀑)※
C分散   (分岐瀑)※
D滑   (渓流瀑・滑滝・斜瀑)※
Eその他  (滝モドキ)※
落差又は
比高
m B多段の場合の落差は合計値
水の落下する高さ又は流下する比高
滝口巾 m 平均的なもの
滝周長 m 地下水滝の場合のみ計測
特記 - 滝つぼの有無
「A2山地(非火山性)景観」の場合と同じ
11:
天然橋
岩門・石門
Natural bridge
水食または風食により岩に貫通する形で穴のあいたもの 全部 分類 - 「A2山地(非火山性)景観」の場合と同じ
比高 m
穴径 m
● 自然景観資源調査
自然環境保全上重要な要素である自然景観について、その現況(「何が」、「どこに」、
「どのような状態」で存在しているか)を、全国的視野で把握するため、視対象である自然景観の基盤(骨格)をなす地形、地質及び自然景観として認識される自然現象に着目して、それらの位置及び特性等を調査するもの
で、
昭和61年度及び62年度の2ヵ年にわたって実施され、その成果として
環境庁編「日本の自然景観(各地域版)」などが刊行されています。
その調査内容の一部について、『滝』に関連する項目がありましたので掲載いたします。
※ご参考までに
  黒や灰色で記載の文字は、管理人のオリジナル
  カラー文字は、管理人所蔵の資料からの引用です
滝 悠 遊
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